最終更新:2015年5月4日


第8回日本台湾学会賞
選考委員会報告書

(1)選考委員会の開催

 日本台湾学会賞選考委員会は、2015年1月に本学会各理事より2013〜14年度刊行の『日本台湾学会報』第15、16両号掲載論文から歴史社会、政治経済、文化文学言語の三分野の優秀論文の推薦を受けた。委員会は駒込武委員長、北波道子委員(政治社会部門)、洪郁如委員(歴史社会部門)、陳培豊委員(文化文学言語部門)から構成されていたが、日本と台湾、日本の中でも東京と関西圏に居住地が離れていることもあって、2月8日から2月17日にかけてEメールによる持ち回り会議を開催した。

(2)選考経過と結果

 各理事推薦結果をふまえて優秀論文を慎重審議した結果、以下の2論文が理事による推薦者数も多く、選考委員会としても高く評価できたことから、学会賞授賞候補として選定した。その結果は文書にて2015年3月7日開催の第8期第6回常任理事会で報告、承認を得た。

☆受賞論文
*政治経済分野
該当なし

*歴史社会分野
・周俊宇「もう一つの新嘗祭ー植民地台湾における祭日としての展開」(第16号)

*文化文学言語分野
・明田川聡士「李喬「小説」と1960年代台湾文学界における安部公房の受容―台湾文学における1960年代実存主義運動から80年代民主化運動への展開― 」(第16号)

(3)推薦理由

1.歴史社会分野
・周俊宇「もう一つの新嘗祭ー植民地台湾における祭日としての展開」(第16号)
本論文は、植民地における天皇制というスケールの大きなテーマに挑みながら、新聞記事に加えて、近年台湾で発掘された各種日記類を博捜することにより台湾人の受け止め方に迫ろうとしたものである。新嘗祭が国民統合に利用されたという側面ばかりでなく、新穀収穫というイメージを介して米・農業との関係から台湾人に受容されたという指摘は、斬新である。新嘗祭のような「宮中祭祀」は、近年「国家神道」の定義にかかわってその重要性が指摘されていることがらでもあり、台湾史研究のみならず、帝国の他地域の歴史研究との対話の可能性を切り開いたものとして高く評価できる。

2.文化文学言語分野
・明田川聡士「李喬「小説」と1960年代台湾文学界における安部公房の受容―台湾文学における1960年代実存主義運動から80年代民主化運動への展開― 」(第16号)
本論文は、戦後台湾文学を代表する作家である李喬について、彼が国民党独裁体制下の1960年代に、カミュなど西洋の実存主義文学のみならず、安部公房の『砂の女』などの影響を受けて、創造的模倣を行ったことを明らかにしたものであり、台湾の作家における現代日本文学の解釈批評の動態分析としても質の高い論述となっている。旧ソ連・東欧・韓国・中国などの独裁体制時代の諸国における安部公房受容との比較に関しても重要な問題提起を行っている点、さらに文学上の影響・受容関係の指摘に止まらず。そのことを通じて、戒厳令下を生き延びた台湾人の実存を浮き彫りにしている点を高く評価できる。

以上
第8回選考委員会委員長
駒込武

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