最終更新:2021年7月29日


第12期理事長就任にあたって
松田康博(東京大学)

 このたび、第12期理事長に就任いたしましたが、2期目をお引き受けするかどうか、いささか悩みました。成立当初、本学会の理事長は2期4年が慣行でしたが、第8期以降1期2年のみになっていたからです。ところが、2020年以降、いわゆるコロナ禍により、本学会は突然危機対応に迫られました。学術大会を初めとして、あらゆる活動がオンライン化しました。このため時間と体力を取られ、本来進めるべきだった改革や改善が中途半端になってしまいました。引き続きコロナ対応を進めると同時に、緒に就いた改革・改善を順調に進めるため、もう1期やるよう説得を受け、お引き受けすることにしました。
 私は、2年前に第11期理事長に就任した際に、「しっかりやりたいこと」として次の3つを挙げました。
 第1は、学術大会、学会誌、ニュースレターの「3点セット」に加え、定例研究会、ホーム  ページ、メールサービス、文献目録など本学会の基本的な機能をきちんと維持することです。これらは、一部検討を要するものも含まれますが、しっかりやりたいと思います。
 第2は、学会のソーシャル・アウトリーチを強めることです。「台湾修学旅行支援研究者ネットワーク(SNET台湾)」への協力や、「日本台湾学会賞」改革などがこれに当たります。SNET台湾は、台湾研究の成果を社会にわかりやすく還元する強い発信力を持っています。『日本台湾学会報』掲載論文のみならず、市場で流通する著書に対しても学術賞を与えることは、学会の社会に対する影響力を強めます。第23回学術大会の公開シンポジウム「台湾を学び、教える」は、学会と社会とのつながりをどのように発展させるかを考えさせられる企画となりました。今後、こうした社会への働きかけを深化させたいと考えています。
 第3は、学会のグローバル・アウトリーチを強めることです。台湾の外で台湾を学術的に研究する主な学会として、北米台湾研究学会(NATSA)と欧州台湾研究協会(EATS)があります。さらに、中央研究院をベースに台湾研究世界大会(WCTS)が定期開催されていますし、国際的な台湾研究の学術誌としてInternational Journal of Taiwan Studies(IJTS)が刊行されました。日本のJournal of Contemporary East Asia(JCEA)も東アジア地域を研究する各地域研究学会に英語論文の推薦寄稿を求めています。本学会としては、IJTSに英語で書評および学術大会記事の寄稿を始めましたし、過去の日本台湾学会賞受賞論文の中から適切な論文を英訳してJCEAに推薦投稿する「対外発信強化プロジェクト」を立ち上げました。ウィズ・コロナの定例研究会としては、2020 年 10 月2日にNATSAおよびEATSとの共催のGlobal Taiwan Cultural Salon をオンラインで実施しました。
  これらの活動を通じてわかったことが2つあります。まず、学会ロゴの重要性です。上記の組織は全てロゴを持っていて、本学会でも作る必要性を痛感させられました。次が、ホームページ改革の重要性です。これは、ウィズ・コロナの時代のアウトリーチ活動全てに関わります。より見やすく、使いやすい学会活動のプラットフォームとして、ホームページ改革を進めることは必須です。
 第12期理事長として、上記の3つの領域でしっかりと運営をして参ります。私の理事長としての責任は、これらをできるだけ手間暇かけずに実現することです。研究者の日常は多忙を極めるからです。ところが、第11期では、このことができませんでした。コロナ対応のため、常任理事や幹事の方々にかなりの負担を強いてしまいました。今年も懇親会などで直接お会いして御礼を申し上げることができず心苦しい限りです。
 特に常任理事と幹事を去られるお三方については名前を挙げてお礼を申し上げたいと思います。三澤真美恵さんには、厳しい状況にもかかわらず前理事長として多大のサポートをいただきました。明田川聡士さんは、就職して間もない忙しい時に、書記を担当していただきました。今井淳雄さんには、昨年の学術大会がオンライン化したときに、ホームページ管理とメールサービスで極めて大きな負担を強いてしまいました。働き過ぎの方々にきちんと目配せをできなかったことを、心から反省しています。
 ただ、最後にもう一つだけ、4つ目としてやりたいことがあります。それは、多様な会員が学会活動により参加しやすくなるよう工夫することです。ジェンダーやセクシュアリティに関わらず、自宅と会場の距離や障がいの有無に関わらず、あるいは引退世代か子育て世代であるかに関わらず、今までより参加しやすい学会活動を目指し、そして特に若い有望な研究者が、学会報告や学会報投稿によりチャレンジしやすい学会にすることです。今後2年間かけて、具体的にやれることから進めて参ります。
 日本台湾学会は、世界のあらゆる組織や個人と同様に、コロナのもたらした危機にさらされています。ただし、危機管理の目的は、単に損害を回避して原状に復帰することではありません。むしろbuild back better(よりよい復興)を目指すことが求められます。コロナ禍は、我々を自宅に押し込め、我慢ばかり強いたのですが、他方でこれまでの学会運営を見直し、思い切って改革する契機も与えてくれています。危機は転機でもあります。
 ポストコロナの時代に、みなさんと日本や台湾のどこかで集まり、「日本台湾学会は進化したね」と、笑って言い合える日がくるよう、多くの方に耳を傾けながら、微力を尽くしたいと思います。会員の皆さまのご協力と、ご鞭撻をお願い申し上げます。

・山口守第7-8期理事長挨拶(2011年) 
・佐藤幸人第9期理事長挨拶(2015年)
・三澤真美恵第10期理事長挨拶(2017年)
・松田康博第11期理事長挨拶(2019年)

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