最終更新:2015年10月18日


第9期理事長就任にあたって
佐藤 幸人(アジア経済研究所)

 既に今年5月の会員総会とその後の学術大会の懇親会で挨拶をいたしましたが、その場にいらっしゃらなかった方も少なくありませんので、2つをまとめてここでの挨拶としたいと思います。特に懇親会での挨拶は、あの喧噪の中、恐らく聴いていた方は10人いたかどうかだったでしょうから。
 両方とも日本台湾学会が新しいステージに入りつつあるということを申し上げました。ひとつは学会の運営における世代交代です。会員総会では「始まりの終わりの始まり」という言葉を使いました。
 この学会は1998年5月に発足しましたが、その準備をしていたのは主に若林正丈さん、藤井省三さん、塚本元さん、張士陽さん、松田康博さんとわたしです。東京にはいなかった石田浩さんと沼崎一郎さんとも適宜連絡をとっていました。集まって議論をした後、下北沢の焼き肉屋で食事をしていたことがとても懐かしく思い出されます。当時、松田さんやわたしはまだ30代でしたから、その後も今に至るまで長く学会の運営に携わることになりました。しかし、当時のメンバーの中で2番目に若いわたしが今期の理事長に就いたことは、発足に関わった世代から次の世代へのシフトの始まりだと思います。これからは若い世代が中心になって運営していって欲しいですし、そうあるべきです。
 若い世代が学会運営に関わりやすくすることが、今期の理事会の最も重要な任務だと考えています。具体的な課題は理事選挙の制度改革です。理事選挙は学会を運営する理事を選出するという役割とともに、先達へのリスペクトを表すという側面も持っていますので、若い人が理事に選ばれにくくなっています。2つの面を完全に分離することは難しいと思いますが、前者の役割により重きを置いた制度に改める必要があると考え、既に常任理事会では議論を始めています。
 もうひとつは、学会という器の中身である台湾研究もこれから変わっていくのではないかということです。これが懇親会の挨拶で述べたことです。
 設立大会で開かれた記念シンポジウムの冒頭において、若林さんは戦後における台湾研究が発展、民主化、アイデンティティという3つの系列から構成されていると述べられました。あれから十数年が経って、今の台湾は学会がスタートした時からずいぶんと様変わりしています。政権交代が繰り返されるようになり、アイデンティティでは台湾人が過半を占めるようになりました。そして、中国が多くの領域で以前と比べてとても大きなインパクトを持つようになりました。
 わたし自身の研究分野である経済は概ね発展系列に属しますが、ここでも大きな変容がみられます。台湾の1人当たりの国民所得は今では2万米ドルを超え、先進国の後を追うキャッチアップ段階から脱しつつあります。同時に、分配や公正への関心が高まっています。もちろん、中国との関係がどうなるのか、競争的になるのか、補完的になるのかは最も重要な問題です。
 変化する台湾に対応して、わたしたちの研究の軌道も大なり小なり修正していくことになるでしょう。これまでの研究にも新しい意義付けをする必要があるかもしれません。研究対象の変化をどのように研究の発展に結びつけていくのか。それは地域研究が宿命として持つ難しさであり、だからこそ地域研究は面白いのだと思います。学会の運営に責任を持つものとしては、向こう2年間、会員が台湾の新しい潮流を踏まえた研究にチャレンジする場と学会がなるように努めていきたいと思います。
 処々至らぬところはあると思いますので、会員のみなさんはどうぞご遠慮なく注文をつけてください。日本台湾学会においてこれまで同様、できればそれ以上に活発な研究交流がおこなわれるように、ともに励んでいきましょう。

・山口守第7-8期理事長挨拶(2011年) 

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