定例研究会 歴史・政治・経済部会


 

第43回

 

日時 2007年1月12日(金) 18:30-20:30
場所 上智大学 2号館10階2-1015a会議室
報告者 石川 誠人 氏(立教大学大学院)
テーマ 「信頼関係の危機と維持―1961年中国国連代表権問題をめぐる米華関係」
要旨  国共内戦に敗北して以降、わずか台湾・澎湖諸島とわずかな島嶼を実効支配するに過ぎなかった国府にとり、国府が国連の「中国」の議席を占めることは、国府が「中国」を唯一の正統政府であるという虚構を国際関係においても維持するために必要であった。そして、国府の国連代表権の確保を強力に支持していたのはアメリカであった。東西冷戦の状況下で、アメリカは西側陣営一員である国府を支持し、国連の場においても国府の国連議席を守り、中華人民共和国の国連への加入を阻止することに尽力していた。

 しかし、アメリカが1950年代を通して国府の議席保持と中国の国連加盟阻止に利用してきた、中国代表権問題に関する提案を国連総会で討議しないという「審議棚上げ案」は、1961年には否決される見通しが強くなった。このため、アメリカのケネディ(John F. Kennedy)政権は、国連での国府の議席を守り中華人民共和国を排除するために、「審議棚上げ案」に代替する方策を模索し始めた。しかし、アメリカの代替策の模索は、モンゴルの国連加盟問題が加わって、国府の「二つの中国」への警戒を惹起し、米華間において確執を生み出した。

 本報告は、この1961年の国連中国代表権問題により生じた米華間の信頼関係の危機がいかなる経緯を経て回避されたのかを検討するとともに、この信頼関係の危機の回避がその後の米華関係に与えた影響を探ることにより、ケネディ政権期の米華関係の態様について考察する。