第10期理事長挨拶
三澤 真美恵(日本大学)
日本台湾学会のこれまでの道のりについては、本日このあとのシンポジウム(第19回学術大会プレ企画「台湾研究の地域比較―台湾、日本、米国、欧州の経験交流―」)でパネリストの若林正丈先生から十全に語られることと思いますが、創立20周年を来年に控え、会員総数480名を数え、学術大会、学会誌、ニュースレターの「3点セット」も大変充実した形で定期的に継続されて来ています。定例研究会や他地域の台湾研究との交流も活発です。これも一重に、学会を支えてくださる会員のみなさま一人一人が努力を積み重ねてこられた結果だと思います。
日本台湾学会は、学際的な場であり、各会員がそれぞれに自分の登るべき山で孤独に歩みを続ける「孤独な登攀者のネットワーク」です。孤独な歩みに疲れて足を止めたくなる時に、ふと彼方の山を見やって、同じく孤独に登り続ける会員の姿があるのを確認し、勇気を得られる。そうした、ディシプリンを超えたつながりで出来ていると思います。
その意味で、創立時に本学会存立の大きな根拠とされた「研究者と研究資源の分散と組織化過小をくい止める」という「消極的な受身的な」しかし重要な機能は、一定果たされつつあるのではないでしょうか。とりわけ映画を専門とする私のように極端に小さな山を登っている研究者にとって、このネットワークの存在は本当に心強い、かけがえのないものです。
このたび、第10期の理事長を拝命するにあたって、野心的な目標は何もありません。持続可能性を大切にして、学会活動を次の世代に着実につなげていきたいと思います。もとより、私自身の力不足は明らかですが、幸いなことに、大変力強い方々に常任理事をお願いできることになりました。
今後2年間、常任理事の皆さんと協力しながら、これまで学会を支えて来られた諸先輩や理事の皆さんのお力を借りつつ、この貴重なネットワークを、未来に向け、世界に向け、少しでも開かれた形で維持していけるように、努力して参りたいと存じます。会員のみなさま、どうぞよろしくお力添えのほど、お願い申し上げます。
(2017年5月27日(土)理事会での挨拶)