日本台湾学会台北定例研究会


 

第1回

 

日時 2001年8月16日(木) 18:30開始
場所 台湾e店地下会議室
(台北市新生南路三段76巷6号)
報告者 松田 康博 氏
テーマ 「ポスト国民党時代の台湾政治試論」
使用言語 日本語
参加費 100元



参加体験記
 2001年8月16日、台湾大学近くの会議室において、第一回台北定例研究会が開催され、松田康博氏(防衛研究所第二研究部第三研究室主任研究官)による『「ポスト国民党時代」の台湾政治試論』の報告が行われた。
 本報告は、年度末に行われる立法委員選挙を視野においた報告であるが、その視座設定において、松田氏から昨年三月の総統選挙において、民進党政権が樹立したにもかかわらず、現代台湾政治の視点が、未だに国民党政権時代と同じ視点であることに対する批判とそれに代わる新たな視点の設定が必要との指摘がなされた。同時に、国民党の下野に始まる「ポスト国民党時代」における政策決定メカニズムの変容が説明された。このような状況下において、従来の国民党主席兼中華民国総統による政治運営(ストロングマンシフト)は、政権交代によって、実行できなくなったものの、国民党という巨大な組織が、地方において動揺をきたしながらも、中央政界において依然として多大な政治的影響力を発揮していることは、党国体制の不完全な崩壊を意味するものであり、この枠組の中で、年度末の立法委員選挙を把握していく必要があるとの報告がなされた。
 以上のような視座設定の基に、本論である党国体制の不完全な崩壊の過程で行われる今回の立法選挙の行方について、現時点においてこれを予測することは不可能であるが、選挙の展開における重要なポイントとして、各政党が台北市だけに注目せず、台湾全島において、その支持をいかに拡大できるか、つまり人口の大部分を占める台湾人(本省人)の中産階級を対象に、いかにしてその支持を拡大させていくかで、議席の配分が決定されるのではないのかとの分析が行われた。そして最後に、立法委員選挙後の政治展開において、総統府による人事の配分の処理が、政権中期から後期にかけての重要な分水嶺になるとの指摘がなされた。
 九月以降、台湾においては立法委員選挙を中心に政治の季節が繰り広げられることになる。このような状況下において、とかくその時々の情報に流されることで、研究がジャーナリスティックな傾向に向かい易い中で、現代台湾政治における分析枠組の設定を参加者に提示してくれた本報告は、今後の台湾政治の分析において、貴重な一助になるのではないのかと思われる。(宮城和暢記)