日本台湾学会台北定例研究会


 

第35回

 

日時 2006年1月14日(土)15:00開始
場所 国立台北教育大学(旧・国立台北師範学院)行政大楼506室
(社会科教育系討論室)(台北市大安区和平東路2段134号)
報告者 岩村 益典 氏(国立台湾師範大学博士課程)
コメンテーター 蔡 水秋 氏(淡江大学日本研究所修士)
テーマ 「台湾における農会の設立に関する一考察:三峡農会と三峡」
使用言語 北京語

参加体験記
 2006年1月14日、国立台北教育大学において第35回台北定例会が開かれた。岩村益典氏(国立台湾師範大学博士課程)が、「台湾における農会の設立に関する一考察:三峡農会と三峡」というテーマで報告を行い、王淑宜氏(三角湧文化協進会理事長)がコメンテーターを務めた。参加者は11名であった。
 三峡農会は台北県三峡の農業組合であり、台湾初の農会(1900年成立といわれている)であるという。また三峡は台湾で初めての抗日運動があった場所であり、初めての同風会(台湾人の日本人化を促進する組織)が成立した土地でもあるという。すなわち、三峡は日本政府の台湾統治政策にとっても軽視できない土地であり、台湾の日本化を研究する上でも興味深い背景をもつ。ただ三峡農会に関する研究は、未開拓な部分が多く、実はこの三峡農会が本当に台湾で最初の農会であるかどうかも分からないだけでなく、この農会が農民自らが組織したのか、もしくは日本政府が成立させたものなのかも議論の渦中であるという。
 岩村氏はこの三峡農会の研究に関し、多くの問題を提起された。三峡において、反日感情を親日に変えるべく、日本政府がどのような政策を展開したのか。三峡の有力者、同風会、街の再建築の関係はどうなっているのか。移民政策との関係は、など。これから議論の余地が大いにあり、研究の発展性が伺える。
 さらに質疑応答時においても、この三峡農会の業務内容はどうなっているのか。日本植民地時代の韓国における農会との差異はあるのかなどの質問があった。
 本日の報告は、私の専門分野ではなく、報告内容の大部分が新知識であった。報告者の岩村氏自身が三峡で長期的に生活しているということもあり、三峡の土地柄が具体的に分かった。
 また日本人移民に関しても研究を重ねている岩村氏によると、台湾の日本統治時代、吉野村に在住していた日本人は、台湾人なら誰でも知っている1930年代の流行歌「望春風」を全く知らないという。日本の台湾統治政策には、まだまだ多くの興味深い事実が眠っているのではないかと思う。
 私は、この度初めて日本台湾学会台北定例研究会に参加させていただいた。比較的若い研究者が参加し、報告もリラックスした雰囲気で行なわれた。岩村氏が「望春風」を歌われたのには、少々驚いたが、歌声は素晴らしかったと思う。誰でも溶け込みやすい研究会と感じた。今後も積極的に参加したい。(新井雄 記)