定例研究会 歴史・政治・経済部会


 

第44回

 

日時 2007年7月31日(火) 17:00-20:00
場所 上智大学 2号館10階2-1015a会議室

報告者1 羽田 哲 氏(海洋政策研究財団)
テーマ 「日台間の漁業の問題点」
要旨  現在日本は、中韓とは漁業協定を締結して操業水域を設定し、漁業資源の有効管理を行っている。一方で台湾との関係を見てみると、日台は事実上広い海域で境界が接しているものの、何ら公的な漁業取決めがないのが現状である。よって台湾主張の漁業権が日本主張の海域と重複する問題等について、日台は「民間」級の交渉の場で漁業調整を行っている。また広い範囲を泳ぎ回るマグロ・鰹類について、日本は現在世界第一位のマグロ消費国であり、さらに台湾は全漁業生産高の五割弱を遠洋漁業が占め、国際漁業を通して日台漁業は相互依存の関係にある。だがマグロ・鰹類は高度回遊性魚種として国際的漁獲規制を受け、さらに資源の減少傾向から、日台は国際的に責任ある漁業活動を行う必要がある。

 今回の報告では、沿岸と沖合漁業を地域的、遠洋漁業を国際的視点からに分けて台湾漁業を概観し、東アジア国際関係と漁業の国際的な潮流、有力な科学的知見を交えて日台間の漁業の問題点を検証していく。

報告者2 黄 偉修 氏(早稲田大学大学院アジア太平洋研究科・院生)
テーマ 「『戒急用忍』政策の決定過程-決定パターンの検討」
要旨   1996年台湾海峡ミサイル危機以後、中台においては政治関係が冷えているにもかかわらず、経済関係が深化する構図となってきたが、台湾政府は1996 年李登輝が打ち出した「戒急用忍(急がず忍耐強く)」政策に基づき、対中国への投資の規制を続けている。さらに、戒急用忍政策は対中政策のみならず、全般的な経済政策にも関わるため、国家のあり方、進路を決める国家戦略レベルの政策でもあり、台湾の初代民選総統の初めての国家戦略レベルの政策でもある。そのため、戒急用忍は台湾の大陸政策の中において極めて重要であると言えよう。

 しかし、これまで発表された文献のほとんど全てが合理的行為者モデルに基づいた研究、もしくは記述を目的としたものであり、体系的に戒急用忍の政府内の決定過程について分析し解釈しようとしたものはほとんど皆無であったと言ってもよい。また、李登輝は国家安全会議を政策決定の調整の中心として組織的に対中政策を決定したという記述が多いが、2002年の監察院の報告においては、戒急用忍の政策決定は組織的に調整を行れていないという。要するに戒急用忍政策の決定パターンを解明することによって、李登輝の民選総統時期の対中政策決定過程への理解が一層深まり、さらにこれまで空白となっていた政策決定の解明の重要性が自ずと明らかになってくるであろう。

 本報告は戒急用忍の決定過程を考察し、そのパターンの特徴を明らかにすることを目的としている。