定例研究会 歴史・政治・経済部会
第134回
東京大学東洋文化研究所付属東洋学研究情報センター、科研基盤A(松田康博代表)
1949年に台湾に渡った後の中華民国政府は、70年代の国際的孤立状況を迎えても、形式上および表面上は中国の正統政府としての外交原則を大きく変更しなかった。しかし、その実際の外交行動様式は変化する。台湾国内での大きな変動や政治的衝突を抑制しながら、国際空間のなかで台湾としての活動空間を作り上げることになった、その外交実践にみられる思考・行動様式とはどのようなものだったのか。そして、その具体的な外交の実践の積み重ねの結果として、台湾として存在空間を確保しただけではなく、台湾としての認知を求める「台湾外交」へと変容する。本報告では、90年代以降に明確に現れる外交の枠組みの変化に先立って生じてきた実質的な行動様式の変化、いわば台湾外交の起源といえる歴史的過程について、一つの試論を展開する。