定例研究会 歴史・政治・経済部会


 

第138回

 

日時 2019年5月20日(月) 17:30~19:00
場所 東京大学東洋文化研究所3階大会議室
題目 ブックセミナー『尋租中國:台商、廣東模式與全球資本主義(中国をレントシークする:在中台湾企業,広東モデルとグローバル資本主義)』
討論 川上桃子(アジア経済研究所),園田茂人(東京大学)
司会 黄偉修(東京大学)
共催

東京大学東洋文化研究所,科研基盤研究A(松田康博代表)

概要 報告者は,1990年代以来,「台商」(中国で事業を行う台湾企業やその経営者ら)に着目して,中国のグローバル化の過程とメカニズムに関する研究,なかでも「広東モデル」の分析を行ってきた。今回のセミナーでは,その集大成として今年3月に刊行した『尋租中國:台商、廣東模式與全球資本主義』(台大出版中心)の概要を報告する。

中国の奇跡的な経済発展の特質やそのメカニズムについては,いまだ十分に解き明かされていない問いがある。中国が資本主義への転換を遂げていく過程で,グローバルなレベルとローカルなレベルはどのように結びついたのか?台湾企業はその過程でいかなる役割を果たしたのか?「広東モデル」はなぜ,中国の興隆の鍵となったのか?

本書では,これらの問いを考察するにあたり,グローバル・バリューチェーン論を修正した分析視点を用い,中国が1980年代に始まった労働集約型産業のバリューチェーンの新たな地理的拡大のダイナミズムを捉えて,世界の工場へと発展していった過程を明らかにする。台湾企業は,グローバル・バリューチェーンが広東へと拡大していく過程の前衛となったのであり,台湾企業なくして,広東の輸出志向型の発展モデルはありえず,広東モデルなくして,中国の経済的興隆もまたありえなかった。報告ではまた,「レントシーキング型国家」という枠組みから,中国の発展のダイナミズムと,中国が現在直面している問題を論じる。